Kyoto Experimental Economics Laboratory (KEEL)

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1.2 本プロジェクトの実験哲学研究としての位置づけ

図2 の実験経済学研究,すなわちX,Y,   の関連についての研究は,学術論文として執筆中 なので,以下では執筆中の論文に含まれない実験哲学研究,すなわちX,Y ,   の関連につい ての研究だけを簡単に述べる.2

プロジェクトは,Knobe(2003)の実験の拡大版を設計し,それを日本(京都産業大学)と中 国(沿岸部の蘇州大学と内陸部の寧夏大学)で合計275 人の学部学生に対して実施した.実験 の目的は,副作用の善悪について信念をもたない行為者のもたらす副作用にそれぞれの地域の 実験参加者(学部学生)が志向性を認めるか否かを知ることである.

Knobe(2003)の結果によれば,行為者が「自分の利益追求は環境を改善させるという自覚 (信念)」をもっていても,「環境を改善したいという欲望」をもっていなければ,多くの人々は 「行為者は環境を意図的(志向的に)に改善した」と認めないが,行為者が「自分の利益追求が 環境を悪化させるという自覚(信念)」をもっていれば,「環境を悪化させたいという欲望」を もっていなくても,「行為者は環境を意図的(志向的に)に悪化させた」と判断する.言いかえ れば,悪い副作用には欲望が欠けていても信念があれば志向性を帰属させるが,良い副作用に は信念と欲望の両方がなければ志向性はない主張する.

もし行為者が欲望も信念ももたなければ,どうだろう.行為者が,環境への副作用を自覚し ているが,それが環境を改善させるのか悪化させるのか確信(信念)をもたないとしよう.人々 は,副作用が悪く出たときにだけ副作用に志向性を認めるだろうか.これを知るための実験を プロジェクトは実施した.

実験は,Knobe(2003)の実験の仮想例:

Knobe(2003)の実験の仮想例:

 

2以下の研究は,筆者の指導する周艶(京都産業大学経済学研究科博士後期課程)との共同研究である.

に新たな仮想例:に新たな仮想例:

を加え,各実験参加者(参加者i)に対し仮想例ごとに

1 私は,CEO が副作用を意図的にもたらしたと思う.

0 私は,CEO が副作用を意図的にもたらしたと思わない.

に新たな仮想例:に新たな仮想例:に新たな仮想例:

が観察された.
実験結果は,以下の哲学的含意をもつ.不等式(1) は,Knobe (2003) の例でもUtikal & Fis- chbacher(2009)の例でも,ノーベ効果が観察されたことを示す.前者の例で観察されたのは Knobe (2003) の実験結果と同じであり,後者の例で観察されたのはUtikal & Fischbacher(2009) の実験結果の逆である.いっぽう不等式(3) は,自分は志向的と認めない仮想例でも他者はそう 認めるだろうと,かなり多くの実験参加者が予想したことを意味する.しかも,(2) から,自分 自身の意見とは異なって,他者は負の副作用よりも正の副作用に志向性を認めるだろうと予想 する実験参加者が多かった.以上の実験結果は,既存の研究結果に反したり直観的に理解しに くかったりするが,中国と日本の3 大学すべてで明瞭に観察されたものであり,何らかの普遍性 と理由があるものと想像される.

表1: プロジェクト実験結果

表1: プロジェクト実験結果

5実験は,ノーベ効果に関連する経済実験の追加実験として行われたが,実験で志向性についての言及はされず, 実験参加者に他の実験参加者の意思決定以外も実験結果も何も知らされていない.

図3: プロジェクト実験結果

図3: プロジェクト実験結果図3: プロジェクト実験結果図3: プロジェクト実験結果図3: プロジェクト実験結果

参考文献

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[6] Malle, Bertram F. & Joshua Knobe (1997): \The folk concept of intentionality,” Journal of Experimental Social Psychology 33, pp. 101-121.

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